平成24年に「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」が施行されました。

以前より問題視されている高齢化社会。
近年は以前ほどニュースに取り上げられることはなくなりましたが、現在もその問題は刻一刻と進行しています。
問題の進行が一端を担い転倒事故の件数は増える一方となっており、近年ついには交通事故の件数を上回るほどの件数となり問題視されています。

これらの問題の対策として打ち出されたのが「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(バリアフリー新法)」です。

これらは高齢者、障害者等の自立した日常生活を確保することの重要性にかんがみ、国や地方公共団体・施設設置管理者等へと施設・道路・駐輪場・公園等に関する移動等の円滑化に努めなければならないことを定めた法律となっております。

(国の責務)
第四条 国は、高齢者、障害者等、地方公共団体、施設設置管理者その他の関係者と協力して、基本方針及びこれに基づく施設設置管理者の講ずべき措置の内容その他の移動等円滑化の促進のための施策の内容について、移動等円滑化の進展の状況等を勘案しつつ、これらの者の意見を反映させるために必要な措置を講じた上で、適時に、かつ、適切な方法により検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるよう努めなければならない。
2  国は、教育活動、広報活動等を通じて、移動等円滑化の促進に関する国民の理解を深めるとともに、その実施に関する国民の協力を求めるよう努めなければならない。

(施設設置管理者等の責務)
第六条 施設設置管理者その他の高齢者、障害者等が日常生活又は社会生活において利用する施設を設置し、又は管理する者は、移動等円滑化のために必要な措置を講ずるよう努めなければならない。
高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律より一部抜粋

このように法律で国・地方公共団体・施設設置管理者等はこれらの問題に対し必要な措置を講ずることを責務と定めました。

同法が施行されるまでは滑ることに対し明確な基準が無く、無条件に管理者側へと責任を追及してきたことにより以下のような判決が多くなっておりましたがこの度の施行により利用者の方々への安全配慮の基準、施設設置管理者等の満たすべき基準が数値化されました。

これからは施設管理者としての責任範囲を明確化し、利用者の方々への安全を提供していくことが可能になりました。
     
  • 事例1

    コンビニ内での転倒事故に115万円の支払い命令

    ファミリーマートで買い物中の女性が転倒して左腕を縫うけがをした。

    判決
    原告(転倒者)勝訴
    判決理由
    ファミリーマートは安全確保のため、水ぶきの後からぶきするなど、客が転ばないよう店舗経営者らを通じて指導する義務があったとして、慰謝料などの支払いを命じた。
    (大阪高裁)
  • 事例2

    ビル内での転倒事故に損害賠償2,200万円の支払い命令

    JR池袋駅ビル内で主婦が転倒。左足骨折、左関節機能麻痺となった。

    判決
    原告(転倒者)勝訴
    判決理由
    低コストを業者に強要するあまり清掃も十分ではなく、また床に油や水が付着して滑りやすくなっていたことが原因である。
    (大阪高裁)
  • 事例3

    裁判所内での転倒事故に105万円の支払い命令

    大阪地裁支部で、視力障害者の男性が階段で転倒し、肘の骨を骨折した。

    判決
    原告(転倒者)勝訴
    判決理由
    点字ブロックや滑り止めがあれば転倒することはなかったとし、こうした警備は努力目標でなく法的な義務だったと位置づけて国に105万円の支払いを命じた。
    (大阪高裁)
  • 事例4

    ウィンズ渋谷内での転倒事故に、264万円支払い命令

    ウィンズ渋谷で男性が転倒し、腰と左ひざをねん挫した。

    判決
    原告(転倒者)勝訴
    判決理由
    転倒した場所は御影石が光を反射するほど磨かれ、当時雨でむれていた。歩行者が転倒する可能性は無視し難いものであり、設置と管理には欠陥があったと判断しJRAに 264万円の支払いを命じた。
    (大阪高裁)
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